なぜ宮城県の不登校生徒数が全国1位なのか?~県の公式見解と対策から考察~
こんにちは。不登校支援センター仙台支部の上原です。
今回は不登校支援センター仙台支部の拠点である、宮城県の不登校事情について取り上げます。
皆さんもご存知かもしれませんが、文部科学省の調査によると、実は宮城県は全国でもトップレベルに不登校生徒数が多い県であるということが判明しています。特に平成26年の調査では、宮城県の中学1年生の不登校生徒数が日本で1番多かったんです。
なぜ宮城県は不登校生徒数ワースト1位になってしまったのでしょうか?
宮城県の公式見解と共に考えてみたいと思います。
不登校になったきっかけはなんだろう?
平成27年3月に宮城県教育委員会が「中1不登校の解消に向けて」という冊子を作成しています。冊子には
- 宮城県が取り組んでいる不登校対策支援モデル
- 学校や生徒に対して実施した不登校の現状調査におけるアンケートの結果や考察
- 不登校改善モデル 等
様々な不登校に関するデータが載っていて、宮城県の不登校問題の現状や取り組みを周知すると共に、各学校の不登校対策の参考となるような内容となっています。
その冊子のなかでは、不登校のきっかけとして、以下の要因がアンケート結果で高い割合を占めていました。
・無気力
・いじめを除く友人関係をめぐる問題
・学業の不振
・不安等の情緒的混乱
・親子関係をめぐる問題
また、子どもの学年別の不登校のきっかけとして、小学生は家庭環境や家族をめぐる問題が高いのに対して、中学生は友人関係や学業の不振など、学校生活や生徒自身に関わる問題の割合が高くなっています。
宮城県が行っている、不登校の未然防止策と初期対応とは?
宮城県は県内の小中学校に不登校の未然防止と初期対応に関してのアンケートを実施しています。具体的に宮城県の小中学校ではどのような不登校の未然防止策と初期対応を実施しているのでしょうか?
【未然防止策は?】
不登校生徒数が5人以上の学校と、そうでない学校のアンケートの回答を平均値と比較し、その差に着目し分析・考察が行われています。特に差が大きかったのは「子ども全員への声掛け」を実施しているという項目です。実施している割合が高いのは不登校生徒数が少ない学校であり、ここが不登校数が5人以上の学校とそうでない学校との一番の違いと考えられます。
宮城県教育委員会では、「分かる授業作り」を重要な未然防止策のひとつに位置付けています。それは、課題の明確化や、成功体験の創出によって生徒ひとりひとりの自己有用感や自己肯定感を育む教育を通し、魅力ある学校づくりをして不登校を防ぐという教育体制を表わします。また、今後の課題は「小・中学校の交流や連携」とされています。
【初期対応は?】
初期対応として行われているのは
- 教室以外での情報収集
- SC(スクールカウンセラー)、SSW(スクールソーシャルワーカー)との連携
- 管理職、主任、担任への報告体制
などで、学校内での連携に力を入れようとしているようです。
しかし反対に
- 子どもとのふれあいの時間作り
- 子どものサインを見逃さないようにする
- 気になる変化を保護者と共有する
など、子ども自身との関わりや各家庭との連携にはあまり手が回っていないような印象です。中学校では特に「進級元の学校から情報を得ている」という項目も(宮城県全体として)低く、この辺りの連携が不足していることも、中学生の不登校が多いポイントかもしれません。
特に「保護者と学校の間で連携が不足している」というのは、子どもの正確な状況の把握にも影響を及ぼし、子どもに対しての誤った対応に繋がりかねないため、大きな注意点だと考えられます。
学校の不登校対策の現実は・・・
冊子には教育委員会からの
- 〇月~〇月には〇〇に配慮して対応する
- 不登校が発生したら1日目2日目には〇〇の対応する
といった、不登校問題への対応策としてのモデルなども載っていました。
では、不登校問題への対応策をどのくらい学校側は実行できているのでしょうか?
実行するには、「現実的に実行できる内容なのか」が大きなポイントであると考えられます。少なくともここで書かれているような動きをしている学校は少ないように私は感じます。
学校の教職員の方々は膨大な量の仕事をしており「人手不足による多忙で、そこまでの細やかな対応をする時間が取れない・・・」という話を、実際に私は耳にしたことがあります。現実的に実行できる体制作りが必要とされるのかもしれません。
学校と外部機関との連携が不足している?
アンケート結果の中で、不登校支援センターのカウンセラーである私としては気になる項目が1つありました。「学校が不登校生徒への対応のために連携した外部機関」という項目です。
学校側が不登校問題対策として連携した外部機関として、割合が高いものは
- 教育委員会
- 児童相談所
- 病院
などが挙げられていました。しかし、宮城県全体としては、学校側が外部機関との連携に取り組んでいる割合は低く、また連携している先も限られているようです。
このような状況から今後の課題として、外部機関との連携を進めるコーディネーターが必要である、とされていました。つまり第三者の手助けがないと、外部機関との連携が取りにくいということなのでしょう。
反対に不登校支援センターでは親御さんとのカウンセリングの中で、学校と連携したやり取りが生まれることも多くあり、個別的な連携は比較的取りやすくなっているように私は感じています。教職員の方々からも「学校としてどういった対応をしたらいいか?」などのご質問を受ける機会も多くあります。これは、学校でも不登校の対応に悩んだ時、相談する先が不足している、ということの表れだと考えられます。
このように、不登校生徒ごとに個別で行っている、不登校支援センターと教職員の方々の連携を、学校全体としても進められたら良いのかもしれません。
しかし私たちのような民間の支援団体には相談しにくい、といった面が学校側にはあるのかもしれませんね。不登校支援センターが実施し、取り組んでいる生徒向けのセルフケア講座や教職員向けセミナーなどは、宮城県の学校ではまだあまり利用されていない現状があります。
外部機関との連携という部分が改善されていくと、宮城県の不登校問題の現状が改善していく可能性もあるかもしれません。
宮城県の不登校事情の今後は?
今回は、宮城県の現在の不登校問題の状況や取り組みなどについてまとめてみました。今後、宮城県の不登校事情はどうなっていくのでしょうか。
残念なことに平成30年の現在でも宮城県の不登校生徒数は全国でもトップクラスのままです。課題として挙げられたものへの取り組みもまだこれからといったところでしょうか。
県としての取り組みや課題に私達も理解を示しながら、何よりも子ども自身の力を伸ばせるような対応をしていきたいですね。
それではまた。
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